クラッシュ・バンディクー プロモーションインタビュー


PlayStation 20周年記念企画
SPECIAL INTERVIEW Vol.3(電撃プレイステーション/プレコミュ)
プレイステーション20周年を記念して、「電撃プレイステーション」と「プレコミュ」の連動企画として行われたスペシャルインタビュー!!プレイステーションや「クラッシュ・バンディクー」シリーズのプロモーションを担当された 佐伯雅司さん、細谷恵さんへのインタビューから、このページではおもに「クラッシュ・バンディクー」に関連する箇所のみを掲載します。プロモーション秘話など、興味深いエピソードも!
 



――60秒CMは、いまでこそあらゆるジャンルの産業でもよく目にするようになりましたが、放送当時は非常に衝撃的でした。


細谷:長尺CMといえば「クラッシュ・バンディクー2」は60秒CM含め、結構好き勝手にやらせてもらえたタイトルでした。「おはスタ」という朝の子ども番組の60秒CMで、子どもと濃いコミュニケーションを取るとしたらどうしたらいいかと考えて。こうすればクラッシュを好きになってもらえるかとか、ドリフ的なポジションに近づけるかなとか、できるだけポジティブに、そして本気でやってしまいました。私は「クラッシュ」シリーズをプラットフォームアクションゲームとして認知してもらいたかったんです。たとえCMを評価されたとしても、それだけではホメ言葉にはならないんです。扱う商品そのものがしっかりしていて、鮮度が高いときにおもしろいCMを打たないと話がズレてしまう。最初の「クラッシュ・バンディクー」はゲーム難易度が高めだと思ったのですが、そのあとに続くシリーズのチューニングだったり、「人に優しい」ゲームにしていくという設計方針を開発者よりちゃんと聞いていたので、これなら大丈夫と思ってがんばれた。ゲーム自体がちゃんとしていたから、アクセルを踏み込むことができたのだと思います。

佐伯:CMをおもしろくというのは当たり前の話。広告を作る人は、結果はどうあれ、新しい仕事をもらったときはそう考えていると思う。もちろん気持ち悪くない目立ち方でね。ただ、最近のCM、PlayStation4などもそうですが、あれは作った人たちがすごく苦労して生み出した、気持ちのいいものには仕上がっているとは思うけど、見たことがないような、本当にうまいなと思うようなレベルのものは少なくなったように感じています。ちなみに電撃PlayStationで連載されていた"プレイ!PlayStation"なんて、最初は月イチでやっていて、バカウケしてた。そういうのが最近はないかもしれない。


――PlayStationという今までになかったものが発売されて、CMやキャッチコピー、広告の力でPlayStationてこういうものだというのが形作られたように思います。その印象付けは狙い通りに行きましたか?


細谷:すべてが計算ずくというわけではなかったかもしれないですね。

佐伯:意識したところでは、人を不快にさせないとか、嫌われないようにというのはありました。おもしろいという言葉にはいろいろな意味がありますが、タイトルから逸脱していないかとか、そういうチェックはしていました。現場でおもしろいと思っているものが、じつはおもしろくなくて、そういったものがどんどんできてしまうということもあるわけです。まったく満足いかないけれど、締め切りが迫っているからCMをオンエアしなければいけない、広告を張り出さなくてはいけない、ということもなかにはある。ただ、おもしろいものができそうなときって、途中でこれはおもしろくなるというのがわかるんですよ。これも確立的には低いし、ときどきわからないものも出てくるんですけど(笑)。「クラッシュ」とか、女の子がキャーキャー言っているけれど聞かないとわからない。聞いてようやく、ああ、そういう意味かと。ダメな作品は絶対にわかるんだけど、いいものはわからないときはわからない。

細谷:当時私は、ハードウェアやプラットフォームに寄った広告を行う場合は、表現IQを高めに。ソフトウェアに関して言えば娯楽性を押し出して、ソフトそれぞれで好きにやるのがいいのかなと思ってやっていました。ただどちらのCMを作る場合でも、ラストカットのPSのロゴ上にキャッチコピーを載せたとき、PlayStationとしての気持ちやメッセージや誓いから見える、PlayStationの人格と離れないような表現を意識していました。そうしたソフトやハードの話題が清算されたことにより、当時のPlayStationのキャラクターというのか、人格が具体的に形作られていったと思うんです。ですので、全部が全部最初から計算ずくというわけではなく、今のPlayStationの印象につながっているのだと思います。


――担当されたお仕事で、とくに印象的だったお仕事はありますか?

細谷:異業種の方(佐藤雅彦さん)とのダッグという意味で印象的だったのは「I.Q」ですが、濃さで言えば、「クラッシュ・バンディクー」の1〜3ですね(笑)レコード会社出身者の意見になってしまうのですが、アーティストって基本的に言うことを聞いてくれないものじゃないですか。それに対してゲームキャラクターは、もちろんプロデューサーの了解を得なくてはいけないんですけど、そのキャラにこうなってほしいというのを具体的に形にしていけるんです。この子は人ならきっとB型で前向きな性格でと盛り込んで育てていける。クラッシュは海外で生まれたキャラクターですけど、こういう設定にしたら日本では人気が出るんじゃないかというのを自由にできたのが楽しくて。テーマソングも、最初は横文字の「Crash」の発音だったのを「クラッシュ」などと、すべて和製英語の発音にしていただくとか。そうすることで小学生と握手しやすくなるかななど、こだわりを全部実行できた。これはゲームのキャラクターという特殊な存在との関係だったからこそできたことだったので、すごくいい経験でした。全然ゲームを知らなそうな子どもが電車で歌っていたりとか、うれしかったですね。


――PlayStationは自分にとってどんな存在なのかを率直に教えてください。


細谷:SCEに在籍していたころは、久夛良木さんたちから毎日刺激的なメッセージやビジョンを与えてもらえて。冷めることなく常に情熱を持って、PlayStationに取り組めました。もともと私は、PlayStationとか以前に、ゲームというジャンルそのものが好きで、競合概念なくフラットな観点でゲームを見ていたんです。ただ、PlayStationというものを振り返ると、32ビットハード戦争という話題の追い風や自分の体力、そしてみんなでワクワクしながら作り上げている感が、かかわった全員でいい具合に持てていたので、仕事上で青春しちゃった、燃えちゃったというのを経験させてくれたプラットフォームであったと言えます。私にとってのPlayStationは、ハードやソフトではなく、それを取り巻く人たちという印象なんです。人のカタマリや運動体というイメージでした。

 

このページでは現在はもう読むことのできないインタビューを掲載します。掲載している内容については権利者様からご連絡いただいた場合は迅速に対応いたします。



TAG index


TAG index